二項係数の剰余 その1
この記事では、連続整数の積がで割り切れることの証明を通して、連続整数をその素因数で何回割れるかを調べます。
で表しましょう。すると、この定理は次のように言い換えられます。
ということで、が持つ素因数の次数を調べることにします。これには、ルジャンドルの定理という便利な定理がありまして、をで割り切れる回数は
であることがわかっています。と言っても、の中のの倍数の個数、の倍数の個数、...を足し合わせたと考えれば当たり前です。ですから、ので割り切れる回数は
となります。
さて、これをの関数と見て、任意の素数に対してのときにこの値が最小になることを示せばよいです。そこで、まずはシグマの中身について考えてみましょう。これは整数の中にあるの倍数の個数を表しています。これは次の図のように、周の長さがの円に長さnの糸を巻きつけてゆく様子と考えるとわかりやすいです。(図はがになっていますが同じことです。(すみません、直すのめんどくさいです泣))
このとき問題の個数は、円につけられた印を糸が何回通過しているかに対応していることになります。しかし考えてみると、糸の末端であるの位置を変えてみても、その数は2種類(場合によっては1種類)しかないことがわかります。つまり、の値は2つだけということです。具体的にはです。
では次に考えることは、がどんな条件を満たすときにどちらの値を取るのか、です。
この図を見ると、赤い部分の長さが青い部分の長さを超えるとに対応する糸の先端が印を跨ぐので回数としては大きい方の値をとります。逆に、赤い部分の長さが青い部分の長さ以下であれば小さい方の値をとります。赤い部分の長さとはをで割った余りのことであり、青い部分の長さとはをで割った余りのことであるので、今述べたことは次の定理にまとめられます。ただし、以降をで割った余りをと書きます。
ここまで来ればもう簡単ですね。当然なので、のときは常に上側、すなわち小さい方の値を取ることになり、で足し合わせた値は最小になります。よって
という不等式が任意の素数で成り立つことになり、定理1が無事示されました。
次回は、この定理2を使って二項係数が素数で何回割れるかを調べます。ではまた。